やけど(熱傷:ねっしょう)
やけどとは、どういう病気?
やけどは、火炎、熱い液体、蒸気、または熱い物体などの高温の熱にさらされることによってからだが傷つく病気です。やけどは、皮ふの最上層のみの軽いやけどから、皮ふの奥深く、さらには筋肉や骨を含むからだの深いところまで破壊される深刻なやけどまで、さまざまな程度があります。日常生活以外にも、工場、仕事場での作業や、火災や爆発の事故でやけどの危険性があります。やけどは、皮ふやからだの組織が熱のエネルギーで破壊されるため、非常に痛みを伴い、治るまでに感染症を起こしたり、皮ふは治ってもきずあとが残るなど、さまざまな合併症を起こす可能性があります。
やけどになりやすい人は?
誰でもやけどの危険にさらされる可能性がありますが、やけどのリスクとなる要因は次の通りです。
- 子供: 幼い子供は好奇心が強く危険に対する認識がないため、やけどを負う可能性が高くなります。
- 高齢者: 年齢を重ねるにつれて皮ふが薄くなり、弾力性が低下するため、やけどをしやすくなります。
- 職業の種類: 消防、溶接、または化学製造などの産業で働く人々は、やけどのリスクが高くなります。
- 料理と台所での作業: 頻繁に料理をする人、台所で作業する人は、高温の液体、蒸気、または高温になった器具の表面によるやけどのリスクがあります。
- 感覚の低下: お薬やアルコールの影響、または熱に対する感覚が低下する病気を持つ人は、やけどを起こしやすくなります。
- 病気の合併症: 糖尿病、末梢血管の病気、または血流や神経機能が影響をうける病気を持つ人は、やけどのリスクが高くなります。
やけどの症状とは?
やけどの症状は、程度によって異なります。やけどの一般的な症状は次の通りです。
- 発赤: 軽度のやけどの場合、皮ふが赤またはピンク色になります。
- 腫れ: 患部が腫れたり、むくんだりします。
- 痛み: やけどは、皮ふ表面の深い層に及ぶと痛みを伴います。
- 水ぶくれ: より重いやけどでは、皮ふに水ぶくれができます。
- 傷んだ皮ふの剥がれ: やけどが治るにつれ、傷ついた皮ふははがれて脱落します。
- きずあと(瘢痕化:はんこんか): やけどは、とくに深いやけどや、顔や手などの皮ふが薄い部分にきずあとを残す可能性があります。
やけどの予防法とは?
ここでは、家庭内の生活のなかで、やけどを防ぐためのヒントを次に示します。
- 熱い液体を飲んだり提供したりする前に、必ず温度に注意してください。必要に応じて温度計を使用してください。
- 熱い鍋、フライパン、皿を扱うときは、オーブン用ミトン(ミット)または鍋つかみを使用してください。使う前に、乾燥していて、使用できる良好な状態であることを確認すること。
- 熱い液体や食べ物を子供の手の届かないところに保管してください。
- 調理中の食品を放置しないでください。キッチンを離れる必要がある場合は、コンロまたはオーブンの電源を切ります。
- 調理するときは、引火しやすい材質の服や、ゆったりとした服、ひらひらした服を着用しないでください。
- オーブンミトン(可燃性)、タオル、紙などの可燃物は炎から遠ざけてください。
- 火災の場合に警報が鳴るように煙感知器を設置し、定期的にテストしておきます。
- 小さなお子様がいる場合は、誤ってストーブをオンにしないように、ストーブノブカバーを取り付けることを検討してください。
- アイロンやヘアカーラーなどの熱を発生する器具を使用する場合は、メーカーの指示に従ってください。
やけどの治療法について
やけどの治療は、やけどの程度によって異なります。軽いやけどは自宅で応急処置を行うことができますが、皮ふの赤みが引かないときや、皮ふがむけている場合は、皮フ科での診察が必要です。一般的な治療法を次に示します。
- やけどを冷やす: やけどを治療するための最初のステップは、患部を冷たい流水または冷湿布で冷やすことです。これは、腫れや痛みを軽減するのに役立ちます。
- 塗り薬: 痛みを抑えやけどによる炎症、感染を軽くするために、コルチコステロイドや抗菌薬の入った塗り薬を処方することがあります。
- 創傷ケア: やけどの皮ふを保護し、治りを促すために包帯や軟膏を塗る、創傷ケアを行います。
- きずの処置: やけどで皮ふの深くまで壊れている場合は、傷ついて死んだ部分をとりのぞき、皮ふの再生を促す処置を行います。
- きずあとの管理: やけどが治った後、塗り薬、シリコンゲルシートなどを使ってきずあとを目立たなくするようにします。
やけどによって皮ふの大部分が損傷した場合、損傷した皮ふを体の別の部分の健康な皮ふに置き換えるために皮ふ移植が必要と判断されることがあります。このような場合は、手術ができる病院で治療を受けて頂くことになります。体の広い範囲のやけど、筋肉、骨に達する重いやけど、気道が腫れたり閉塞したりするやけどでは、生命に危険がおよぶため、救急救命センター等での緊急の対応が必要になります。