帯状疱疹ワクチンの必要性について

水痘・帯状疱疹ウイルスの感染によって水痘（みずぼうそう）になったあと、このウイルスは感覚神経節内のニューロンに長い間潜在しています。からだの免疫力がストレスなどによって下がったときに、ウイルスが勢いを取り戻して活動し、帯状疱疹、帯状疱疹後神経痛を起こします。

帯状疱疹の説明

帯状疱疹ワクチンの接種は、帯状疱疹および帯状疱疹後神経痛の発症リスクを軽減するのに役立ちます。

帯状疱疹ワクチンの種類

帯状疱疹の予防に使えるワクチンには、乾燥弱毒生水痘ワクチンと乾燥組換え帯状疱疹ワクチン（シングリックス筋注用）の２種類があります。これらの効果を比較した研究のメタ分析（複数の研究結果を統合して解析する統計的な方法）では、帯状疱疹の発生率の低下において 乾燥組換え帯状疱疹ワクチン が 弱毒生水痘ワクチンよりも優れていることが示されています。

このデータを踏まえ、当クリニックでは、乾燥組換え帯状疱疹ワクチン（シングリックス筋注用）（以下、シングリックス）の接種を行っています。

シングリックスはチャイニーズハムスター卵巣細胞由来の不活化ワクチンで、水痘・帯状疱疹ウイルス糖タンパク質gEと免疫の活性化を助けるアジュバントAS01Bが含まれています。

臨床試験のデータ*では、接種後4年間の観察期間では50歳以上での有効性は97.2%、70歳以上では89.8%、9.6年の観察期間の有効性は89%です。帯状疱疹後神経痛に対するワクチンの予防効果は 4年間では50歳以上で100%、70歳以上で89.27%です。

*国際共同試験 ZOSTER-006試験:国際共同試験 ZOSTER-022試験

シングリックス接種の対象者

50歳以上の方は帯状疱疹を発症する可能性が高く、とくに60歳以上の方はそのリスクがさらに高くなりますので接種を強くお勧めします。また18歳以上で免疫低下やその可能性により帯状疱疹を発症するリスクがある方、アトピー性皮膚炎や乾癬の治療のためにJAK阻害薬の内服を予定されている患者さんにも接種をお勧めします。

健康状態や既往歴等を勘案し接種の適否を判断しますが、次の方は接種できません。

• 発熱している方、重篤な急性疾患にかかっている方、このワクチンの成分でアナフィラキシー起こした方。

シングリックスの接種回数と間隔

シングリックスの接種は2回の筋肉注射（上腕三角筋）が必要です。投与間隔は一般的に2か月ですが、2回目の接種は遅くても6 か月以内に受けていただく必要があります。なお、免疫抑制薬の投与を予定されているなどの必要性に応じて 投与間隔を1 か月まで短縮することもできます。

シングリックスの有害事象について

• 注射部位反応:臨床試験のデータから、ワクチン接種者の78%の方に注射部位の痛みがでます。同部位の発赤（38%）、腫れ（26%）がみられます。また、通常の日常生活に影響するほどの痛み、発赤、腫れの反応は9.4%に生じています。
• 全身反応：筋肉痛 (44.7%)、疲労 (44.5%)、頭痛 (37.7 %)、悪寒（さむけ） (26.8 %)、発熱 (20.5%)、胃腸症状 (17.3 %) の頻度です。

これらの反応のほとんどは 投与後1 ～ 3 日間にみられ、１〜２日以内に回復しています。この間、激しい運動は避けてください。

受診手続きとシングリックスの接種費用

接種希望日の1週間前までに、通常の診察と同様に、当クリニックのwebまたはデジスマ診療券アプリで予約の上、来院をお願いします。その際に、予約の連絡事項の欄に、「帯状疱疹ワクチン」と記入しておいてください。来院時にシングリックス接種の説明と健康状態の評価、１回目、２回目の接種日の相談、予約を行います。後日予定日に来院いただいて当日の接種可否の判断を行い、同意書に署名いただき、接種を行います。

シングリックスの接種は保険診療ではなく、自費診療になります。1回 22,000円（税込）です。